認知症の看護~診断基準と症状について
ここ数年、医療の世界では「認知症」が話題になっています。
有病率に関する調査研究によると・・・我が国の65歳以上の高齢者の認知症有病率は約5~7%と考えられていたが、2012年の報告では推定有病率15%となっている。
100人に15人、1000人に150人が認知症と推定されています。
臨床の場で働いているものの印象としては、認知症は非常に厄介なイメージがあります。
厄介・・・というと失礼かもしれませんが、
- 一度説明しても忘れてしまうので、何度も同じ説明をしなければならず、仕事が前に進まない。
- 点滴などの処置を受け入れて貰えない(病気という認識がない)
- 点滴などの侵襲的なルートを抜いてしまう(また入れないといけないし、強く拒否されると精神的にも肉体的にも負担が大きい)
- ご飯を食べてくれない、またはご飯を食べてないと言い張る
・・・など。とにかく医療者(看護師)泣かせだったりします。
ただでさえ忙しい医療の現場に、このような患者さんが増えてしまったら・・・と考えるとゾッとします。
家族も「認知症になったら病院に置いておけばいい」くらいの認識をされる家族もおり、なかなか退院もできない状況になります。
今までは「認知症だから仕方がない」「治療ができない」「拘束するしかない」などの考え方が蔓延していましたが、そのケアの考え方や姿勢もだんだん変わってくるようになりました。
まだまだ現実的には上手く稼働していない実態がありますが、これから認知症に対する理解を深めて上手に付き合っていく必要があります。
認知症の診断
さて、前置きが長くなってしまいましたが、認知症には「診断基準」というものがあります。DSM-5の定義によると・・
A.1つ以上の認知領域(複雑性注意、実行機能、学習および記憶、言語、知覚ー運動、社会的認知)が以前の機能レベルから低下している
B.認知機能の低下が日常生活に支障を与える
C.認知機能の低下はせん妄の時のみに現れるものでははい
D.他の精神疾患(うつ病や統合失調症など)が否定できる
となっています。
認知機能低下とは
- 見当識障害(場所・時間):時間や場所の感覚の障害
- 遂行機能障害(実行機能障害):計画的に段取り良く物事を進める力の障害
- 失語:言葉がうまく話せない
- 失行:運動機能が障害されていないのに、動作がうまくできない
- 失認:感覚器の障害はないのに物の見分けがつかない
などです。
よく言われるのは、「年齢相応の物忘れ」と、「病的な物忘れ」の違いは、食事でよく例えられます。
●年齢相応の物忘れは「ご飯を食べたけど、何を食べたか忘れた」
●病的な物忘れは「ご飯自体を食べたかどうかわからない」
更に、忘れた内容は思い出せないというのも特徴です。
ただ、初期にはその物忘れ自体を隠そうとしたり、「私はボケている」と何だか違和感を覚える事もあり、早期に評価する事が大事です。
認知症の症状
認知症の症状として、上記のような認知機能の障害とBPSD(Behavioral and Psychological of Dementia:行動・心理症状)からなります。
以前は認知機能の障害を「中核症状」、BPSDを「周辺症状」と表現されることもありましたが、今は使われなくなっています。
BPSDの行動症状
- 徘徊
- 暴言
- 暴力
- 性的逸脱行動
- 不穏
- 興奮
- 焦燥
- 拒絶
- 無為
など
BPSDの心理症状
- 幻覚
- 妄想
- 抑うつ
- 不安
など
認知症看護を知る上で、まずはこの症状を正しく理解しておく必要があります。
↓すごくわかりやすいから絶対読んでおいたほうが良い!
認知症ケアガイドブック