認知症看護~主な認知症の鑑別ポイント
今回は、認知症の鑑別ポイントをまとめてみます。
認知症の看護を行う上で、理解しておきたい代表的な認知症です。
AD(アルツハイマー型認知症)
もう言わずとも知れた?AD(アルツハイマー型認知症)。
認知症の中の割合としては67.6%と認知症で一番多い。
危険因子は・アポリポタンパクE(ApoE)遺伝子多型(良くわからない)、高血圧症、糖尿病、高コレステロール血症、喫煙などが挙げられる。
好発年齢が意外と若く、40~60歳または75歳以上がピークと言われている。
性差は1:1.2で女性がやや多く、記憶障害や遂行障害が初発症状の特徴。
臨床症状では、記憶障害が主だが、数分から数週間の記憶障害が著明であり、「いつ、どこで何をした」というエピソード記憶の障害が著明。
記憶障害に加えて、初期から遂行機能障害(実行機能障害:計画し、順序立てて実行する)、見当識障害や視空間認知の障害をともなうこともある。
「今日は何月何日ですか」と聞くと「今日はテレビも新聞も見てこなかったのでわからない」など言い訳をしたり、家族に「何日だっけ」と助けを求める(振り返り徴候)がしばしば見られる。
IADL(手段的日常生活活動:財産や内服の管理、外出、調理など)の障害が比較的初期から始まり、進行と共にBADL(更衣、整容、食事、排泄など)が障害され、末期には歩行や嚥下も困難となる。
頻度の高いBPSDは、無為、アパシー(無関心)、異常行動(徘徊など)、抑うつ、不安などがあり、悪化とともに妄想、幻覚、異常行動の頻度が増える。
画像(MRI・CT)では、海馬、頭頂側頭連合野の萎縮
脳血流シンチグラフィーでは、頭頂側頭連合野や後部帯状回の血流低下が特徴的。
髄液検査やアミロイドPETにより、脳内にアミロイドβの蓄積が示唆される所見があれば診断確定しやすくなる。
治療は、ドネペジル塩酸塩、ガランタミン臭化水素酸塩、リバスチグミンといったコリンエステラーゼ阻害薬、メマンチン塩酸塩(NMDA受容体拮抗薬)が認知機能障害の進行を軽減させる。根本的な治療はなく、遅延させる対症療法となる。
VaD(vascular dementia:血管性認知症)
脳血管障害(CVD:cerebrovascular disease)が原因となり、認知症を引き起きした病態で、認知症があり、脳血管障害があり、両者の因果関係が証明される事で診断が確定される。
認知症の中では19.5%を占め、ADに続いて多い疾患になる。
性差は2:1で男性が優位に多い。
脳血管の障害を伴うため、運動麻痺や記憶障害の症状が特徴的である。
治療の面では、CVDの再発予防を行い、危険因子となる高血圧や糖尿病、脂質異常症などの管理を行いながら治療を行う。
ADを合併している場合があり、同時に評価しながら治療を行う。
レビー小体型認知症(dementia with lewy bodies:DLB)
レビー小体型認知症はADと同じ、変性性認知症(脳の神経細胞が変性・減少して起こる)の一病型である。
認知症の中では4.3%を占める。
性差は1.5:1で男性がやや多く、好発年齢は60~70歳が多い。
レビー小体は神経細胞の内部に見られる封入体(異常な物質の集積により形成される細胞内の異染色領域であり、能動的機能を有しない小体)で、その主要構成タンパクはαシヌクレインである。
レビー小体は心臓交感神経や脊髄、消化管の神経叢にも出現するため、臨床症状では進行性の認知症に認知機能の変動や幻視、精神症状、パーキンソニズム、自律神経症状といった多彩な症状を呈する。
パーキンソニズムを呈する事から、ドパミン系の障害があり、ノルアドレナリン系やセロトニン系も障害され、自律神経障害や神経障害に関与している。
ADと比べると記憶障害の程度が軽く、遂行機能障害や問題解決能力の低下、注意障害が目立つ。
前頭側頭型認知症
前頭葉と側頭葉前部を病変の主とする変性性認知症性疾患。
前頭葉から側頭葉にかけての萎縮を認める例を含め、前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration FTLD)という概念を提唱した。
臨床的には
①前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia:FTD)
②進行性非流暢性失語(progressive non-fluent aphasia:PA)
③意味性認知症(semantic dementia:SD)
の3亜型に区分されているのが一般的である。
認知症全体としては約1%で、性差は1:1
臨床症状としては、初期から病識が欠如しており、深刻感はない。
ADと比較して社会的規範の知識は保たれているものの、道徳的な倫理や共感性が障害されている。
本能の赴くままの行動や不適切な場面での笑い、怒り、大声など礼節の喪失を認める場合もある。
一番多い症状としては無気力、無関心であり、うつと間違えて診断されることもある。
常同行動(同じ所を歩いたり、決まった時間に同じものを食べるなど)や食行動異常(食べられないものを食べる異食行為)、言語障害(単語の羅列など)の症状がある。
CT/MRIでは帯状回前部、前頭葉腹内側皮質、前および内側側頭部といった脳前方部の萎縮を認める。
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認知症ケアガイドブック